〈鉛筆の持ち方〉に本気で取り組んでいます
家庭でも、学校でも、だれもが子どもたちに「鉛筆を上手に持って字を書いてほしい」と願っています。
ところが現実には多くの子どもが身につけることができていません・・・。
どうしてなのでしょう?
どうすればできるようになるのでしょう?
「正しい鉛筆の持ち方」・・・知っているのにできないのはなぜ?
子どもたちは「正しい持ち方」を知っています。
幼稚園や学校で教わった時には上手に持てていても、結局ほとんどの子どもたちが自己流になってしまうのは、なぜなのでしょうか?
・・・それは「鉛筆の動かし方」を知らないからではないか、と考えています。
野球に例えると・・・
バットの「持ち方」と「構え方」を説明しただけで『ちゃんと構えれば遠くにボールを飛ばせるよ。さあ!ホームランを打ってごらん』と言っているのと同じです。
肝心な
「バットの振り方」=「鉛筆の動かし方」
「ボールの当て方」=「線の引き方」
「体の使い方」=「手と指と腕の使い方」
をしっかり理解し練習しなければ
「ホームランを打つ」=「きれいに書く」
ことはできません。
子どもにとって、「書きやすい持ち方」があります。
実は、正しく鉛筆を持つと、最初は力がうまく入らず弱くヒョロヒョロした字になってしまいます。
よく聞くのは「正しい持ち方で書くと上手く書けないからイヤだ~!」という声です。
“正しく持てば上手に書けるはずなのにどうしてそんなこと言うのだろう?”と思いますよね。
でも指先の力がまだ弱い子どもにとって、「一番力が入り鉛筆をコントロールしやすい持ち方」は「正しい持ち方」ではないのです。
そんな子どもたちに、形だけ正しい「持ち方」を教えても、肝心な「動かし方」を教えなければ、「自分なりに安定感のある持ち方=鉛筆が動かない持ち方」で固定されてしまいます。
練習した文字は提出しません
いろは塾は、お子さまの作品やプリント等を提出して審査・採点されるシステムではありませんので、安心してヒョロヒョロ字で練習していただけます。
むしろ、正しい持ち方でヒョロヒョロ字を書きながら適切な筆圧に調整していく過程をふまなければなりません。
たとえば、常に濃い線(=高い筆圧)でしっかり形よく書けていることが評価の対象になる場合、お子さま自身も上手に仕上げたい気持ちがあるのでますます自己流の持ち方を変えることができなくなります。
その結果、持ち方指導も十分にできなくなる可能性があると考えます。
いろは塾では、段級取得システム・コンクール・展覧会などはございません。
「鉛筆の動かし方」にはコツがあります
このコツをつかめば鉛筆が自由に動くので、字が書きやすくなるのはもちろんのこと、様々な用具で絵を描く時にもいきいきとした線が出せるようになります。
いろは塾では、指と手の動きを上手に使って鉛筆を動かす練習をくりかえし、そのコツを身につけます。
最初はヒョロヒョロ字でも、長い目で見たときに本当の意味で上手く(=無理な力を入れずラクにスラスラ)字が書けて長時間集中して勉強や仕事ができるようになるのは、正しいフォームを身につけたお子さまです。
いろは塾は本気の持ち方指導に取り組んでいます。
なお、鉛筆に取り付ける矯正器具は使っておりません。
根気よく時間をかけてトレーニングします
一人ひとりのお子さまのペースに合わせ、「なぜこのフォームで書いた方が上手に書けるのか」、「どうして今の持ち方は良くないのか」をお話ししながら練習しています。
また、集中力がアップする理由や良い姿勢の重要性も説明いたします。
ただし、決して無理強いすることはありません。
「ちがう!」「もちかた!」などと言い放つような表現は決していたしません。
否定する言葉ではなく、「もうすこし指を曲げてみるといいよ」「頭を上げて目を離すと紙全体が見渡せるよ」とアドバイスをしてまわっています。
私も持ち方を直した経験がありますので、一度身についたフォームを変えることは簡単ではないし、なかなか変える気持ちになれないこともよくわかります。
お子さま自身が練習しようという気持ちに向かうよう、ゆっくりじっくりお稽古していきます。
実際に鉛筆を上手に使いこなすようになるには何年もかかります。
練習を続けて、10歳位まで身体が成長してやっとできるようになるお子さまが多いです。
残念ながら、低学年で1年程教室に通っただけでは難しいですし、だからといって就学前から練習たほうがいいかというと、そういうわけでもありません。(いろは塾の定期レッスンの対象年齢が小学1年生以上である理由です)
もし教室に通っている時は完璧にできなかったとしても、この先成長して、指先の力が強くなった時にきっとこの経験が活かされる、と思っております。
今、必要なトレーニングは何かを考えています
また「一人ひとりにとって、今、大事なトレーニングは何か」を見極めてまいります。
持ち方の改善という一点に縛られるのではなく、今、お子さまにとって一番必要なことは何かを考えていきます。
どうしても自己流の持ち方でないと書くことが難しい場合もあるのです。
筆圧コントロールや字形の見方・書き方を優先する時期であるお子さまもいらっしゃいます。
自己流の持ち方のままでも、手が痛くならず、より書きやすくする方法はたくさんあります。
すこし練習してコツがわかってくると「自分も上手く書けるんだ!」と自信がついてきます。
まずは書くことがキライにならないようにしていきましょう。
それからゆっくり持ち方も見直してまいります。
「正しい持ち方」より大事なこともあります
これまで私は「きれいに字を書く」「上手に鉛筆を持つ」という2点に取り組んでまいりました。
ところが「文字を書く」という行為を突き詰めて考えていくと、様々な要素が含まれているとても高度な作業だということがわかりました。(微細運動、音韻意識、視空間認知など)
文字を認識して読んで書く・・・
となりに置いた手本の字を書き写せていても、その文字を認識しているとは限りません。
また、書き順がわからない、線の向きがうまく捉えられない、マスにおさめられない、黒板の文字をノートに写せない、漢字が覚えにくい、読めるけど書けない…など、いろいろな苦手があり、その理由も様々です。
このように読み書きに困難を感じているのであれば、えんぴつの持ち方より大事なことがあるはずです。
①「文字を書く」にはどうしたらよいか(→音から文字への変換、正確な記憶)
②「文字をきれいに整える」にはどうしたらよいか(→運筆コントロール、線の配置)
「文字をきれいに整えて書く」指導をするには、この①と②をわけてしっかり理解する必要があると感じています。
多くの書道教室はおそらく②の指導だと思いますが、いろは塾では①②両面から複合的な視点で指導できるよう、「読み書き困難」への理解を深め、これからも研鑽を重ねてまいります。